輪島塗スピーカー
輪島塗スピーカーの製作中ブログへのリンクです。製作中の画像を随時更新しています。

着想

スピーカーは、振動板のみが正確に振動し、その他は一切振動しないのが理想ですが、実際はどんな材質を用いてもスピーカーキャビネットは振動してしまい、不要な音を出す事は避けられません。

それならば、「キャビネットの材質を天然素材で統一すれば、この不要な音を人の耳にそれほど不快でないものに変えられるのでは?」というのが出発点でした。(和楽器の多くは、木製で漆塗りです。)

その後、響きの綺麗な素材の組み合わせで、振動を抑える(響きすぎない)方向に設計方針を改めました。

17世紀、日本から輸入された漆器の影響でヨーロッパでは漆の模造品(漆はアジアでしか自生していません)の開発が進みました。
シェラックなどの樹脂から作ったワニスを用いるこの技法は、ジャパニング(Japanning)と呼ばれました。

後にニトロセルロースラッカー(黒いものは、Japan blackと呼ばれました)やカシュー等が生まれます。

ピアノのラッカー塗装のルーツは日本の漆器なのです。

また、パリのローラン・ドゥリーという楽器店が、バイオリンに用いるワニスにアジアから取り寄せた漆を配合していた事が1723年の記録に残っています。

経年変化の克服

輪島塗スピーカー開発の過程で最も困難な問題が、経年変化による木の反りや歪みでした。

木工を担当する指物師自らが厳選した原木を買いつけ、製材した後10年以上自然乾燥した木材のみを使用するなど、伝統的手法に徹する事が唯一の解決策でした。

また、塗りの各工程でも漆の硬化時間を充分にとるなど、伝統的手法に従って製作しています。

その結果、無響室での測定でも「L」「R」2本のスピーカーの音圧特性差が、人工材料による量産キャビネットと比較しても遜色ない、極少レベルに達しています。

左は輪島市三井地区の針葉樹林、右は指物師の山崎氏と樹齢100年を超えるアテの木

輪島塗には、椀や茶托等の椀木地(主に欅材)家具や重箱等の指物木地(主にアテ材)丸盆や湯筒等の曲物木地(主にアテ材)座卓の脚等のホウ木地(主にホウや桂)があります。

手作業でも比較的精度が出しやすいこと、アテ材が音響的に輪島本堅地との相性が良いこと、平面で構成されているため、全面に布着せができる等の理由から指物でキャビネット本体を製作しています。

最近になり、椀木地でも椀や茶托用の「荒型」(轆轤で挽く前に欅を何年も乾燥させたもの)を転用すればバスレフポートのフレア程度の大きさまでは経年変化・加工精度とも問題ないことを確認しました。

ただ欅材を輪島塗で仕上げると硬い響きが出るので、拭き漆仕上で用いています。

左は小中塗後、塗師風呂で硬化待ちのキャビネット、右はキャビネットに取り付けられた バスレフポートのフレア部分

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